2011年を怒濤の勢いで駆け抜けたBORNからフルアルバム『VIGOUR』が届けられた。「今のBORNを全て詰め込んだ」という言葉通り、彼らの自信がひしひしと伝わってくる作品に仕上がっているのだが、あっさりと「通過点」と言い切ってしまうところがBORNの強さなのだろう。2012年果たしてBORNはどこまで進化を遂げるのか。メンバー5人にじっくりと訊いた。
取材・文:山本貴也
――2011年はどんな1年でしたか?
猟牙:ひたすらライヴとレコーディングの繰り返しの日々でしたね。
KIFUMI:ライヴ、レコーディング、アメリカの記憶しかないもん(笑)。
K:ライヴをやりながら曲を作るのがこんなにもしんどいものかって……。
Ray:ツアーやりながらのプリプロだったので、頭を切り替えるのが大変でしたね。
――2011年はミニアルバム1枚、シングル3枚とリリースも多かったですよね。
K:プラス『VIGOUR』のレコーディングもあったので……。
TOMO:もうメンバーの顔を見飽きるのも通り越した感じですね(笑)。
――2011年を振り返って特に印象に残ったことはありますか?
猟牙:6月から10月までの怒涛の日々が強く印象に残ってますね。6月に『TRIBAL ARIVALL TOUR 2011』があって、7月に『キラキラ☆サマー☆タイフーン』のオープニングアクトで回らせてもらって、8月に渋谷C.C.Lemonホールで『Peace & Smile Carnival 2011 SHIBUYA 7DAYS』があって……とにかく夏は刺激的でもあり大忙しでもあり(笑)。そしてそんな大きいイベントが続いた後に、10月8日に新宿BLAZEで過去最高キャパでのワンマンがあったんですが、それも大成功に終えることが出来ました。とにかくBORNを色んな人に知ってもらえた夏だったじゃないかなって。
Ray:ライヴだったり音源だったり徐々に固まっていく感じというか、バンドが固まっていく感が手応えとして感じられていたので、それが良かったですね。
K:でかい所でライヴできたことや、色んなことを経験できた1年でしたね。スゲー気持ち良い時もあったし、大変な時もあったし、バンドとしてすごく成長できた1年になりました。
KIFUMI:俺はやっぱり新宿BLAZEのワンマンがすごい記憶に残ってて、もうクオリティどうこうとか、流れどうこうってよりも空気感がすごく気持ち良くて、自分達とファンで世界観を作り上げてるっていう感じでしたね。あの空気感を自分達で操れるようになったらもっと面白いんだろうなって思いましたね。
――充分に操れている感じがしましたけど。
KIFUMI:あの空気感を狙って出したというよりは、“起きた”っていう感じだったので、そこをもっと自分達でコントロールできるようになりたいなって思います。
TOMO:ライヴとかレコーディングはもちろん印象的なんですけど、それ以外にPVも含め撮影が凄く多かったなって印象ですね。写真の撮られ方だったり自分達の一番よく見える角度とかそういうのをすごく勉強した1年でした。
――そして2011年の集大成的なアルバム『VIGOUR』がリリースされますが、シングル曲が1曲も入ってないですよね?
猟牙:そこは攻めました。今回はコンセプトを固めて作ったというよりは、メンバーがどんどん新曲を作って、過去に作った曲とかも改めて皆でいじってたら「これ使える。これも使える。」ってなったから、すごく幅広いアルバムになるとは思ってたんですけど予想以上に色んな曲が集まってしまって……(笑)。まあ色んな曲に手を出してしまうのもBORNのスタイルではあるかなと思ってるので、結果的に自分達の持ってる色んな顔を全部出せたアルバムになりましたね。
Ray:元々アルバム用にとっておこうって曲もいくつかあったり、活動していく中で出来た曲もあって、それを組み込んでいったらこうなったっていう感じですね。
――だけどどの曲もBORNらしさはちゃんとありますよね。
猟牙:そうなんですよね。だから結局色んなジャンルの要素を取り入れて自分達なりに消化するっていうスタイルは今回のアルバムでも感じたんですけど、きっとこの先も続いていくんだろうなって。ある意味これからのBORNの良い土台になったかもしれないです。
――アレンジもセルフですけど、リリースがこれだけ続くと煮詰まったりしませんか?
K:煮詰まったかって言われるとまだ大丈夫だったかな。とりあえずどんどん曲作んなきゃっていう感じだったから、ミーティングで「次はこういう風にしよう」っていうのが1曲もなかったんですよ。ひたすら作っていって、「次はこれかな?次はこれかな?」って、だから見事に曲のストックは無くなりましたね(笑)。
Ray:制作物が多い割には全然ライヴの本数を控えたりとかそういうことが一切なかったんで、すでにどっかしらで刺激はもらいつつその熱を制作に向けられてたので、そこまで壁にぶち当たったっていう感覚はないですね。
K:「あれと似てない?」っていう部分を誰かが気付けば話し合ってアレンジし直したりしました。
――リード曲が「Spiral Lie」ですが、リード曲はこの曲でいこうっていうのは決まってたんですか?
K:レコーディングが全部終わってから「どれにする?」って悩む感じだったよね。
TOMO:候補がいっぱいあってギリギリまでもめた感じです(笑)。
Ray:13曲中、7、8曲候補があったもんね(笑)。
K:本当にブレまくってて、結構「Spiral Lie」ってメロディ入れたの最後の方で、猟牙がメロディを入れたのを聴いたらすごいキャッチーで勢いもあったんで、これいいねって全員の意見が一致した感じです。
猟牙:今回のアルバムの中で「Spiral Lie」が一番ヴィジュアル系の様式美に沿ってる感じはしますね。今までBORNはこういう曲がなかったので、あえて今回はこういう曲が表題にきても面白いんじゃないかなって。こういう曲で間口を広げてアルバムを聴いてもらって色んな面を見せるっていうね。
――「Spiral Lie」の歌詞にメチャクチャ共感したんですよ。実は最近こういう心境があって……。
猟牙:あーなるほど(笑)。じゃあちょっとすがっちゃう感じですよね?
――結構この歌詞に助けられた感じです(笑)。
猟牙:この歌詞書いて良かったー(笑)。これは実体験をもとにしてて、曲が切ない感じだったので思いっきり痛い恋愛の曲にしようと思って、もちろん振り回されてる側が主人公です。そんな痛い恋愛のことを考えて素直に書いたらスラスラ出てきてこうなりました。そして突き刺さった(笑)。
――(笑)。完全に男目線の歌詞ですよね。
猟牙:男の女々しい部分を思いっきり出しましたからね。
――「Spiral Lie」に限らずですけど、サビで開ける感じがすごく気持ち良いですよね。
猟牙:そうですね。だけどこの曲は悩みましたね……。曲の土台自体は1年ぐらい前からあって、ちょっとずつアレンジしたりしてたんですけど、サビのメロがずっと出来なくて、ギリギリになってやっと切なくて納得のいくメロが出来ました。サビで開けるっていうのはある種BORNのお馴染みのやり方というか、俺も好きだし、皆も好きなのかもしれないですね。そこにはマンネリとかを感じずに、自分達の持ち味だと思ってこれからも大切にしたい部分です。
――今回ヴォーカルの声がすごく生っぽくないですか?
猟牙:前は加工して面白くしようっていうのがあったんですけど、今回はそういうのがなくてもいいかなって思って、ミックスの段階で別にこのままでいいですっていうのが多かった。録りの段階で良いテイクが録れてたからなのかもしれないです。普段色んなアーティストの音楽を聴いてて、ギミックで色んな加工をしてるのも面白いんですけど、やっぱり伝わるのって加工してない声の方だなっていうのは感じてて。だから今回はそういう“生”の良さを全面に出してみたんです。だからと言ってこの先そういう(加工した)のが無くなるって訳ではないですけどね。そこは曲や世界観に合わせて変化をつけていきたいです。
――『VIGOUR』の中からお1人ずつオススメの曲を教えてください。
TOMO:「Grave Dancer Punish」ですね。Aメロ、Bメロが打ち込みのドラムなんですけど、サビだけ生ドラムなんです。その打ち込みに負けないタイト且つ、勢いみたいなものにもすごいこだわりました。音作りとかダイナミクスの付け方とかは苦戦したんですけど何とか出来たかな(笑)。ライヴでどうなるかが楽しみです。
KIFUMI:通常盤にしか入ってない「Deep Affection」です。この曲のここを聴いてくれとかではなくて、このアルバムって中身がすごく濃いじゃないですか。それで、濃い中身がきて最後の最後で爽快感を残せた気持ち良さというか、このバランスがすごく気に入ってますね。普通こういう曲って真ん中とかに挟むと思うんですけど、どうしても最後に入れたくて「頼む最後に入れてくれ!」ってお願いしました(笑)。
K:俺も「Deep Affection」で、今回一番出来たなって思うのは、POPって言っても意味のないPOPってやりたくなかったんですよ。この曲で言いたかったことっていうのが、歌詞の為にバックがある感覚と言うか…。この歌詞が一番伝わりやすい伴奏って何だろう?って考えた時にこれがはまったのと、元々猟牙が書いた仮歌詞があって、そのサビのワンフレーズを聴いた時にファンのことが浮かんだんですよ。それで俺がちょっと書き直して今の形に仕上がりました。この歌詞が言いたくてアルバムを作ったと言っても過言ではないかなって。だから是非通常盤を聴いてほしいです。
Ray:俺は「凍結」かな。アルバムの中で一番シンプルなんですけど、シンプルながらも楽曲が切なく仕上がってるのでそこを是非聴いてほしいなと思います。
猟牙:2曲言っていいですか?自分の中でBORN面白いことやってんなって思ったのが、「邪眼」と「Grave Dancer Punish」ですね。「邪眼」はデモをKが持ってきた時にド変態だなって思ったんですよ(笑)。最初何やってんだろうって思ったらギターでスラップをやってるって聞いて、これはひょっとしたら面白いことになるかもなって。「邪眼」はずっといつか採用しようって言ってたけどなかなか今までのCDに入ることはなくて今回やっと入りましたね。
K:俺が持ってきたのに俺自身がそんなに乗り気じゃなくて、選曲会の時に「邪眼」には手を挙げずにいたんですよ。メンバーからは評判はよかったけど本当にいいの?って。
Ray:シングルのカップリングでも候補に出てたこともあったんですけど「本当に入れる?」とか言って(笑)。
K:ノリで作っちゃってたから、ちょっとヴィジュアル系っていうフィールドではファンキー過ぎるかなって思ってたんですよ。
猟牙:もう1曲の「Grave Dancer Punish」なんですけど、これもKが持ってきて、今までちょっとした打ち込みの曲はあったんですけど、ここまで打ち込みを全面に出したダンサブルな曲って無かったので、良い意味で実験が出来たかなって。この曲で1つ大きな道を切り開いた気がしていて、思いっきりキャッチーだけど打ち込み全開っていうのも悪くないなと。なので、この曲をきっかけに今後もまた打ち込みを使った面白い曲が出来るんじゃないかなって気がしますね。
K:これも自分の中でやり過ぎてるかなって思ったりもしたんですけど、そういうのもできるのが個性っていう考え方もあって、BORNは激しい印象が強いと思うんですけど、アルバムならこういうこともやっていいと思いました。
――タイトルの『VIGOUR』の意味は?
猟牙:最初言葉の響きだけが気に入っていて、皆でいいねって意味を調べたら“活力”とか“猛々しい”みたいなそういうのがいっぱい出てきて、このアルバムで2012年の幕が開いて、突き進んでいくっていう意味的にもいいし、タイトルの語呂や雰囲気も気に入ってたんで『VIGOUR』にしました。とにかくBORNが前に突き進んでいくっていう意思表示ですね。
――今回の『VIGOUR』ですが、BORNにとってどんな1枚になりましたか?
TOMO:メンバー皆そうだと思うんですけど今の自分達を出し切った感じなんです。なので今のBORNを全て詰め込んだアルバムになってます。
KIFUMI:やれることは全部やったし、やれないこともちゃんと出来たかなって感じがしてて、曲もらってこの曲がアルバムに入るってなった時に「ヤベーこの曲調は俺手付けられないわ」って曲も正直あったりしたんです。だけどその曲と真摯に向き合ってこの曲はアルバムの中でどういうキャラになるのかなって考えたら自然とその壁も乗り越えられたので、録りながら成長できたアルバムになりましたね。でもこのアルバムはライヴでファンと楽しんで初めて完成すると思ってるので、まだ今は完成までの途中段階っていう感じですね。
K:2011年色んなことを経験して、そこで吸収したものを全部出しきったんですけど、今は早く爆発したいっていう気持ちですね。振り返ることも考えないというか、ライヴで暴れ倒すための2012年の武器です。
Ray:手広くやった感はあるんですが、結局は俺らの王道っぽくなったかなとは思うし、今のBORNが100%詰まってるアルバムですね。新しい俺らの王道を聴いてもらえればと思います。
猟牙:色んな曲調にチャレンジしたんですけど、そこで見えたものもいっぱいあって、逆にもっとこういうのもやりたいなっていう欲が最近いっぱい出てきたので、『VIGOUR』はすごく大事な“通過点”なんだなっていうのを感じますね。このアルバムがきっかけで気付いたこともいっぱいあるし、これを土台に2012年音楽シーンを引っ掻き回して突き進んでいったらまたどんどん新しい欲が出てくると思うので、まずはこの『VIGOUR』を聴いて、ファンと俺らで一緒に成長していけたらいいなと思いますね。
――初回盤の特典映像にアメリカツアーのドキュメントが入ってますけど、アメリカツアーは何回目なんですか?
猟牙:このメンバーで行ったのはもう4回目ですね。ただ今まではロスとテキサスだったんですけど、今回はバージニアのハンプトンなんで場所は全然違うんですよ。
――日本と比べて何か違うところはありますか?
猟牙:ノリが全然違いますね。バラードの「ProudiA」って曲があるんですけど、それをやってる時に皆サライみたいに手を振ってて…まるで24時間テレビみたいだなって(笑)。
K:その中でRayがギターソロを弾いてるのを上手から見てたら何かすごく変な感覚でしたね。
Ray:弾きながら思ったんですけど、あの中でギターソロ弾くのはたぶん最後かなって思いました(笑)。
猟牙:たぶんBORNを知らない人もいっぱいいたと思うんですけど、とりあえず楽しもうっていうテンションが凄くて圧倒されましたね。
K:それにレスポンスがすごい早いから、ライヴをやっててすごい気持ち良かったです。
――アメリカの映像を見てると、よりROCKバンド色が強く見えました。
猟牙:海外行くとそうなっちゃうんですよね。
Ray:たぶん海外行くとリミッターが外れちゃうんだと思います(笑)。
K:テンションが上がり過ぎちゃって、それが良いところでも悪いところでもあるんですけど、手を上げるとそれだけで沸いちゃうから楽器から(手を)離しちゃったりとか(笑)。もうちょっと考えないとなって反省はありつつ、でも楽しかったですね。
――春頃には『RADICAL HYSTERA』がリリースされるとのことですが。
猟牙:ライヴでお馴染みの「RADICAL HYSTERA」を含むCDが3月に発売決定しました。これは元々『RED HOT COBRA』っていうCDを過去に出してるんですけど、それがもう手に入らなくなっちゃってて、聴きたいっていう要望がすごい多いので改めてミックスとマスタリングをし直して、新曲を1曲追加してリリースすることになりました。
――そして3月17日・18日と新宿LOFTで2daysワンマンがありますね。
猟牙:ワンマンの2daysって初めてで、とにかく楽しみで仕方がないのは当たり前なんですが、きっと1日目でメンバーもファンも皆全部出しきってくたばると思うんです。で、2日目は出し切った身体を引きずってずたぼろの身体でまた暴れて……きっとランナーズハイみたいになってると思います(笑)。でもそのギリギリの感じこそがライヴの醍醐味かなと思ってるので、この2日間で皆でグッチャグチャになって、一緒にくたばれるようなライヴにします。
――そしてなんと……!5月には4週連続ワンマンライヴ『bug screamo "CRAZY" section.1〜4』に続くわけですが。
猟牙:これは今から色々と企んでいるんで……相当期待しててください(笑)。
TOMO:今年の4月9日でBORNが結成して4周年なんですけど、4月がツアーで東京にいないので、アニバーサリーの意味も兼ねたライヴになります。
猟牙:FINALの日が良くも悪くもKのバースデーなんですよ。
K:良くも悪くもって……(笑)。
猟牙:やらない訳にはいかないでしょ。バースデー的なのね。でも今までのBORNとは一味も二味も違うライヴになるんじゃないかな。4週もあればきっと何かとんでもないことをやるでしょうしね。
――そんな2012年はどんな1年になりそうですか?
Ray:BORNとしても個人としてもバンド人生では一番濃い1年にはなると思います。
――2011年より濃いとなると相当ですね。
Ray:毎年その濃さが更新されてってるんですよ(笑)。
猟牙:BORNにとって一番でかい1年になると思います。
Ray:毎年そうやっていければ常に成長できるのかなとも思うし、そういう1年にしていきたいです。
K:常に崖っぷちには立っていたいなって。変に安心したくないよねって最近よく皆で話してるんですけど、そういう感じがあるからこそ成長できるし、ライヴの気迫も変わってくると思うんですよ。
Ray:変に落ち着いてしまうと意図しない形で、余裕が伝わってしまうこともあると思うので、だから猟牙が常に崖っぷちっていうのは、らしくていいんじゃないかな(笑)。
猟牙:常に人生の崖っぷちに立たされてるんで、だからライヴも危機迫るものができるんじゃないかな。もう“こいつらコレしかないんだろう”なっていう、そういうライヴをずっと繰り広げていきたいです。